企業活動において重要な資産のひとつが「情報」です。
その中でも外部に漏れることで経営に大きな打撃を与える情報は、特に厳重な管理が求められます。
こうした情報を指す言葉として企業秘密と営業秘密があります。
両者は似ているように思われがちですが、実は使われる場面や意味に違いがあります。
本記事では、企業秘密と営業秘密の違いを具体例とともに分かりやすく解説し、企業における情報管理の重要性について理解を深めていただけるようまとめました。
企業秘密とは
企業秘密とは、企業が保有する情報のうち、外部に漏れると経営に深刻な影響を与える可能性があるため公開されていない情報を指します。
つまり、企業が自らの利益や安定した経営を守るために意図的に秘匿している情報のことです。
その内容は多岐にわたり、技術に関する情報、営業上のノウハウ、人事戦略や経営計画などが含まれます。
例えば、新製品の開発に関するデータや販売戦略、独自の製造技術などは、競合他社に知られると大きな損害につながるため厳重に管理されます。
ただし、企業秘密の内容は企業ごとに異なります。
最先端の技術を武器にする企業では技術情報が最も重要な秘密とされる一方で、老舗の職人技を支える企業では、情報そのものよりも人材の技能に価値があるため、秘密情報の比重は小さい場合もあります。
このように、企業秘密とは法律で定義されたものではなく、企業ごとに守るべきと判断される情報全般を意味する、幅広い概念です。
企業秘密という言葉の使い方
企業秘密は、経営に大きく関わる情報を指すため、主にビジネスシーンで使われます。
特に情報漏えいや不正アクセスに関連する場面で登場することが多い言葉です。
例:企業秘密の使い方
-
企業秘密の漏えいにより会社は甚大な損害を受けた。
-
新商品の開発状況は企業秘密として厳重に管理されている。
-
平社員なので企業秘密を知る立場にはない。
営業秘密とは
営業秘密とは、不正競争防止法によって明確に定義された法律用語で、企業にとって有用であり、かつ一般に知られていない情報を指します。
この言葉は「秘密管理性」「有用性」「非公知性」という3つの要件を満たす必要があります。
-
秘密管理性:適切に管理され、誰でも閲覧できる状態にないこと
-
有用性:事業活動にとって有益な情報であること
-
非公知性:一般に公開されておらず、入手困難であること
これらを満たした情報が営業秘密とされ、法律で保護対象となります。
たとえば顧客リスト、製造方法、研究開発データなどは営業秘密にあたります。
営業秘密は外部に流出すれば経営そのものを揺るがす可能性があるため、不正に取得・使用することは禁止されています。
企業スパイが狙う情報の典型が営業秘密であり、その取り扱いには法的な厳格さが求められます。
営業秘密という言葉の使い方
営業秘密は、特に法務やコンプライアンス、経営戦略に関連する文脈で使われます。
企業の競争力を維持する上で欠かせない存在として重要視されています。
例:営業秘密の使い方
-
営業秘密の管理を徹底するよう指示された。
-
営業秘密が流出すれば企業の存続が危うくなる。
-
不正競争防止法では営業秘密の不正取得が禁止されている。
企業秘密と営業秘密の違いとは
企業秘密と営業秘密の違いは、その範囲と法的な位置づけにあります。
まず、企業秘密は一般的な言葉で、企業が外部に知られたくない重要情報すべてを広く指します。
公開すれば経営に影響を与える情報はすべて企業秘密に含まれるため、範囲は非常に広いといえます。
一方、営業秘密は法律用語として明確に定義され、3つの要件(秘密管理性・有用性・非公知性)を満たす情報のみが該当します。
したがって、法律で保護される対象は企業秘密の一部にあたるのです。
また、使われる場面にも違いがあります。
企業秘密は日常会話やビジネスニュースなどで幅広く使われ、社員同士の会話や企業説明の場でよく登場します。
対して、営業秘密は法的な手続きやコンプライアンスの文脈で使われることが多く、専門性の高いシーンで用いられます。
まとめると、企業秘密は広義の概念、営業秘密は法律で定められた狭義の概念という関係性です。
企業秘密の中で特に重要かつ法的要件を満たすものが営業秘密である、と理解すると分かりやすいでしょう。
まとめ
企業秘密は企業が自社の利益や安定経営を守るために非公開としている幅広い情報を指し、営業秘密はその中でも不正競争防止法に基づき3つの要件を満たした情報を指す法律用語です。
つまり、営業秘密は企業秘密の一部に位置づけられる存在です。
情報管理が重視される現代社会において、両者の違いを正しく理解することは、企業経営に携わる人だけでなく、ビジネスパーソン全般にとって欠かせない知識といえるでしょう。
さらに参考してください: