ビジネス文書や学術論文、契約書など、文章を正確に読み書きする場面では、表現の使い分けが重要です。
その中でもよく登場するのが上記と前述という言葉です。
一見すると同じように「前に書いたこと」を指しているように思えますが、実は使い方や意味に違いがあります。
この記事では、上記と前述の違いを分かりやすく解説し、それぞれの正しい使い方や例文を紹介します。
文章作成の精度を高めたい方や、契約書や報告書をよく扱う方に役立つ内容となっています。
上記とは
上記とは、文章の上や前に書かれている内容を指す言葉です。
契約書やマニュアル、説明書などでは頻繁に登場し、同じ文章を繰り返し記載せずに示すために使われます。特に長文を避けたいときや、紙面に制約がある場面で役立ちます。
例えば、契約書では冒頭に条件がまとめられており、後の条文で「上記の条件に従う」と記載されることがあります。
この場合、読者は冒頭部分に戻って確認する必要があり、文中での参照を簡潔に表す役割を果たしています。
また、「上」という漢字が示すように、横書きの場合は物理的に文章の上部にある内容を示すことが多いですが、縦書きの場合でも過去に記載された内容を指す意味で使用されます。
そのため、必ずしも位置的な「上」だけを意味するのではなく、「すでに書かれた部分」という広い解釈が可能です。
このように、上記は文章内で上方に記載された内容を示すために用いられ、繰り返しを避けて読みやすさを保つために使われる言葉です。
上記という言葉の使い方
上記は、文章の前方や上部にすでに記載された内容を指す場面で使われます。
繰り返しを避け、文章を簡潔にまとめるときに便利です。
ただし、参照する内容と「上記」との距離が離れすぎていると、読者にとって分かりにくくなる点に注意が必要です。
上記の使い方の例
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遠足の持ち物は上記のとおりです。
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注意事項は上記を参考にしてください。
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上記の内容を必ず確認してください。
前述とは
前述とは、「前に述べたこと」を意味し、文章に書かれた内容だけでなく、口頭で発言されたことも指せる言葉です。
ここでの「述べる」は、文章に表すことや意見・考えを口にすることを含むため、対象範囲が広い点が特徴です。
例えば、会議の議事録で「前述の通り、来月の予算は増額されます」と記載すれば、前に書かれた記録を示すだけでなく、実際に会議中に発言された内容も含めて参照できます。
この点が上記との大きな違いです。
また、文章作成の場面では、長文を繰り返すことなく簡潔に表現できる利点があります。
「前述」と記すことで、同じ説明を何度も繰り返す必要がなくなり、読みやすさと効率性が向上します。
ただし、「前述」と指す内容と実際の記載部分が離れすぎていると、読み手にとってわかりにくくなる場合があります。
このように、前述は文章だけでなく発言にも使え、幅広い文脈で「前に述べた内容」を指す便利な表現です。
前述という言葉の使い方
前述は、文章や口頭で既に述べられたことを指すときに使われます。
特に、文章量を減らしたいときや、同じ表現の繰り返しを避けたいときに有効です。
会議記録や報告書など、口頭発言と文章が混在する文脈でも使用できるのが特徴です。
前述の使い方の例
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私の意見は前述しました。
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前述のような課題がいくつかあります。
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前述の件について再度確認してください。
上記と前述の違いとは
上記と前述の違いは、対象となる範囲と使用シーンにあります。
まず、上記は「文章に書かれた内容のみ」を指します。
特に契約書や説明書など、文章内での参照に限定される点が特徴です。
そのため、純粋に文章の構造上の便宜を図る言葉として使われます。
一方、前述は「前に述べたこと」を意味し、文章だけでなく口頭での発言も含みます。
文章表現だけでなく、会議やスピーチといった口語的な場面でも使用できるため、汎用性が高い言葉といえます。
また、ニュアンスにも違いがあります。
上記は「上に書かれている」という位置関係を強調し、形式的で事務的な響きがあります。
それに対して、前述は「すでに述べた」という説明的な要素を持ち、やや柔らかい印象を与える場合があります。
さらに、英語表記ではどちらも「above-mentioned」と訳されますが、日本語においては明確な使い分けが必要です。
契約書やマニュアルなど形式的な文書では上記が適し、会議記録や論文など口頭の発言を含む場面では前述を使うのが自然です。
つまり、上記は文章内の記載限定、前述は文章・口頭両方を含む表現というのが大きな違いです。
この違いを理解して使い分けることで、文章がより正確で分かりやすくなります。
まとめ
上記と前述の違いは、指す対象と使われる文脈にあります。
上記は文章の上に書かれている内容を限定的に指し、契約書や説明書などで使われます。
一方、前述は文章だけでなく口頭で述べられたことも含み、会議記録や報告書など幅広い場面で使用されます。
両者は似ているようで異なるため、文脈に応じて正しく使い分けることが重要です。
この違いを意識することで、文章表現の精度が高まり、読み手にとって分かりやすい文章を書くことができます。
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