不動産競売に関わる用語の中で、多くの人が混同しやすいのが売却基準価額と買受可能価額です。
これらは競売物件の入札に直結する重要な金額ですが、意味や役割には明確な違いがあります。
売却基準価額は裁判所が決定する不動産の基準価格であり、買受可能価額はその金額を基に算出される最低入札価格です。
この記事では、それぞれの意味と役割、さらに両者の違いについて詳しく解説します。
競売物件の購入を検討している方や、不動産投資を考えている方にとって必須の知識となりますので、ぜひ参考にしてください。
売却基準価額とは
売却基準価額とは、不動産競売の際に裁判所が基準として定める価格を指します。
この金額は市場価格とは異なり、裁判所が評価人の調査・鑑定を基に算出します。
評価人は不動産鑑定士などの専門家で、裁判所の執行官とともに物件の現地調査を行い、その結果を評価書として提出します。
裁判所はさらに、不動産登記簿や現況調査報告書などを審査し、権利関係や評価の妥当性を確認したうえで売却基準価額を決定します。
競売物件は通常の売買と異なり、内覧ができなかったり、隠れた欠陥が見つかっても保証がなかったりするリスクがあります。
また、占有者の立ち退きトラブルが生じることもあります。
こうしたリスクを考慮して、売却基準価額は市場価格よりも3割から5割程度低く設定されるのが一般的です。つまり、売却基準価額は購入希望者にとって「競売での目安価格」となる重要な基準といえます。
売却基準価額という言葉の使い方
売却基準価額は、不動産競売の入札や解説記事、裁判所関連の書類などで使用されます。
競売に参加する際に「この物件の売却基準価額はいくらか」を確認することは必須です。
専門家や投資家も、不動産の購入判断において重要な指標としてこの言葉を使います。
例:売却基準価額の使い方
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この物件の売却基準価額は1500万円に設定されています。
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売却基準価額は裁判所が評価書を基に決定します。
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市場価格より安く売却基準価額が設定されるのが競売の特徴です。
買受可能価額とは
買受可能価額とは、競売物件の入札で最低限提示しなければならない金額のことを指します。
売却基準価額の8割に相当する金額であり、これを下回る入札は無効となります。
例えば、売却基準価額が2000万円なら買受可能価額は1600万円です。
この仕組みが設けられたのは、不動産競売をスムーズに進めるためです。
平成17年以前の制度では、最低基準額以上でないと入札できず、入札者が現れない場合には金額を見直して再度募集する必要がありました。
しかし、この方式では時間と手間がかかるため、現在は「売却基準価額の8割」から入札を可能とする買受可能価額が導入されました。
これにより、不当に安い落札を防ぎつつ、入札を促す仕組みとなっています。
買受可能価額という言葉の使い方
買受可能価額は、競売参加者にとって「最低入札価格」を意味するため、入札計画を立てる際によく使われます。
また、専門家や投資家は競売の仕組みを説明する際にこの用語を用います。
例:買受可能価額の使い方
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買受可能価額は売却基準価額の8割にあたります。
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入札金額が買受可能価額を下回ると、その入札は無効となります。
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投資家は買受可能価額を基準に入札戦略を立てます。
売却基準価額と買受可能価額の違いとは
売却基準価額と買受可能価額の最大の違いは、その意味と役割にあります。
売却基準価額は裁判所が不動産の価値を基準として定めた評価額であり、不動産の競売における「基準価格」です。
一方、買受可能価額はその8割に相当する金額であり、入札に参加できる「最低価格」となります。
売却基準価額は市場価格ではなく、リスクを考慮して低めに設定されています。
そのため、市場価格よりも安く購入できる可能性がありますが、入札は必ず買受可能価額以上で行わなければなりません。
例えば、売却基準価額が2000万円の場合、買受可能価額は1600万円となり、入札者は1600万円以上の金額で競り合うことになります。
また、売却基準価額は裁判所の評価に基づくため、物件の価値を客観的に示す指標となります。
これに対して買受可能価額は、入札を円滑に進めるために設けられた制度的な金額であり、競売を効率的に行うための仕組みです。
つまり、売却基準価額は「物件価値の基準」であり、買受可能価額は「最低入札価格」として機能します。
両者の違いを理解することで、競売参加者は適切な入札戦略を立てられるのです。
まとめ
売却基準価額は裁判所が決定する不動産の基準価格であり、市場価格よりも低めに設定されるのが特徴です。一方、買受可能価額は売却基準価額の8割にあたる金額で、入札に参加するための最低金額です。
売却基準価額が「物件の評価額」であるのに対し、買受可能価額は「入札可能な最低ライン」として機能します。
この違いを理解することで、競売物件に挑戦する際に正しい判断ができ、無駄なリスクを避けることができます。
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