企業の業績を評価する際によく使われる指標に受注高と売上高があります。
一見すると似たような言葉ですが、それぞれが示す意味や計上されるタイミングには明確な違いがあります。受注高は将来の収益を見込める数値であり、売上高は実際に収益として計上された金額を表します。
この記事では、両者の定義や使われ方、そして両者の違いをわかりやすく解説します。
会計や経営に関わる方はもちろん、ビジネスの基礎知識を身につけたい方にも役立つ内容です。
受注高とは
受注高とは、企業が発注を受けた工事やプロジェクト、商品提供などの契約金額を合計したものを指します。言い換えると「正式に契約が成立した仕事の総額」であり、将来的に収益として受け取る可能性が高い金額です。
ビジネスの世界では、発注を受けてから実際に代金が支払われるまでに時間差があるのが一般的です。
たとえば、工事やシステム開発のような大規模な案件では、契約時に一部前払いし、完成時に残金を支払うといったケースが多く見られます。
このように代金の受け取りは将来にわたって発生するため、受注高は「将来の収益見込み」を示す重要な指標となります。
ただし、受注高はあくまでも契約段階での金額を集計したものであり、必ずしもそのまま最終的な収益になるとは限りません。
キャンセルや契約条件の変更によって金額が変動する可能性があるからです。
そのため、受注高は企業の成長性や将来の収益性を示す指標として有効ですが、実際の収益を正確に表すものではない点に注意が必要です。
受注高という言葉の使い方
受注高は、企業が受けた仕事の規模や将来の収益見込みを示す場面で使われます。
主に建設業や製造業、システム開発など長期契約が発生する業界で頻繁に用いられます。
経営戦略や業績予測を語る上で欠かせない指標のひとつです。
例:受注高の使い方
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今年度の受注高は前年を大きく上回った。
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新規事業の開始により受注高が増加している。
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受注高が減少傾向にあるため、中長期的な収益に不安がある。
売上高とは
売上高とは、企業が一定期間に商品やサービスを販売し、実際に獲得した売上金額の総計を指します。
企業会計において最も基本的で重要な収益指標のひとつであり、一般的に四半期・半期・年度といった会計期間ごとに集計されます。
売上高は「受注した仕事を実際に提供し、代金を受け取った金額」であるため、企業の現時点での収益力を示す具体的な数字となります。
ただし、売上高が大きくても、利益率が低ければ純利益は必ずしも高くはなりません。
逆に、売上高が小さくても高い利益率を確保できれば、結果的に多くの利益を生むこともあります。
このように、売上高は企業の活動規模を表すものの、利益を直接示す指標ではありません。
そのため、企業分析を行う際には、売上高と併せて営業利益や純利益などの指標も確認する必要があります。
売上高という言葉の使い方
売上高は、企業の収益実績や事業規模を示す際に使われます。
決算発表や業績報告、または市場分析の場面などで頻出する言葉です。
例:売上高の使い方
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売上高が前年比10%増加した。
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値引き販売により売上高は伸びたが、利益率は低下した。
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新規顧客獲得によって売上高が安定している。
受注高と売上高の違いとは
受注高と売上高の大きな違いは、「金額が計上されるタイミング」にあります。
受注高は、企業が受けた注文の合計金額を示すもので、まだ代金を受け取っていない段階で計上されます。
つまり「将来の収益見込み」を示す数字です。
受注高の増減は、企業の成長性や今後の業績を予測する上で重要な判断材料となります。
一方で、売上高は実際に商品やサービスを提供し、代金を受け取った段階で計上される金額です。
そのため「現在の収益実績」を示す指標となります。
売上高は決算において企業規模や事業の健全性を評価するために不可欠なデータです。
要するに、受注高は「これから得られる予定の収益」、売上高は「すでに得られた収益」です。
両者は会計処理の段階が異なるだけでなく、企業の将来性と現状を示す指標として役割が異なります。
企業分析や投資判断を行う際には、この違いを正しく理解しておくことが重要です。
まとめ
受注高は将来受け取る予定の金額を集計した数値であり、企業の成長性や将来性を把握するための指標です。対して、売上高は実際に販売して得られた収益の総額であり、現時点での事業規模や収益力を評価する際に用いられます。
両者の違いは「代金の受け取りがまだか、すでに行われたか」という点にあります。
この違いを理解することで、企業会計をより深く理解し、経営判断や投資判断に役立てることができます。
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