働き方改革や労務管理の議論の中でよく登場するのが裁量労働制とみなし残業です。
どちらも労働時間の管理や給与計算に関わる制度ですが、その意味や仕組みには大きな違いがあります。
裁量労働制は働き方の自由度を高める制度であるのに対し、みなし残業は残業代をあらかじめ給与に含める仕組みです。
この記事では、両者の意味や使われ方、そして混同しやすい違いをわかりやすく解説します。
正しく理解することで、自分の働き方に合った制度を見極めるヒントになるでしょう。
裁量労働制とは
裁量労働制とは、業務の遂行方法や時間配分を労働者の裁量に任せる制度のことを指します。
通常の労働契約では、始業・終業時刻が定められ、使用者の指示に基づいて働くのが基本ですが、裁量労働制では働く時間を細かく管理しません。
そのため、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定められた「みなし時間労働」を働いたものとして給与が支払われます。
この制度は、システムエンジニア、デザイナー、編集者など、成果を重視する職種で多く導入されています。本人に業務遂行を任せたほうが良い結果を得やすいと考えられる業務に適しているためです。
たとえば、9時から17時といった固定勤務ではなく、自分の判断で効率的に働き、最終的に成果を出すことが期待されます。
企業と労働者との間で労働協約を結ぶ必要があり、制度運用には一定のルールが定められています。
裁量労働制という言葉の使い方
裁量労働制は、働く時間の自由度や成果重視の労働環境を説明するときに使われます。
制度導入の説明や求人情報、人事制度の解説などで登場するのが一般的です。
特に専門性が高い職種や、成果物で評価される業務について語られる場面で使われます。
例
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裁量労働制を導入しているため、自分で勤務時間を調整できる。
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デザイナーには裁量労働制が適用されている。
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裁量労働制の対象業務について労使で合意した。
みなし残業とは
みなし残業とは、実際の労働時間にかかわらず、一定の時間をあらかじめ残業したとみなして給与に含める制度です。
例えば、1日8時間の勤務時間を超えて9時間働くことが予想される場合、その1時間分の残業代を最初から給与に上乗せして支給します。
これにより、都度残業時間を計算したり請求したりする手間を省くことができます。
また、会社側にとっても人件費を予測しやすく、経営の安定につながります。
みなし残業は特に営業職や出張が多い職種に導入されることが多く、外回りが多くて勤務時間を正確に把握しにくい場合に有効です。
さらに、みなし残業の一形態として、事業場外みなし労働時間制や、裁量労働制と連動するケースも存在します。
みなし残業という言葉の使い方
みなし残業は、給与や雇用条件の説明、労働契約の中でよく用いられる言葉です。
特に求人情報では「月◯時間分の固定残業代を含む」といった表現で登場することが多く、応募者にとって労働条件を判断する重要な要素になります。
例
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月給には30時間分のみなし残業代が含まれている。
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みなし残業制度を導入することで給与計算が簡略化される。
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外回り営業にはみなし残業が適用されている。
裁量労働制とみなし残業の違いとは
裁量労働制とみなし残業は混同されがちですが、その性質は大きく異なります。
裁量労働制は「成果を重視した働き方」であり、労働時間の管理を緩やかにする制度です。
一方、みなし残業は「残業代の支給方法」に関する仕組みであり、実労働時間を問わず一定の残業時間を給与に含める点が特徴です。
さらに重要なのは、みなし残業の一部に裁量労働制が含まれるという関係性です。
みなし残業は広義の制度であり、その中で成果主義的な職種に対して適用されるのが裁量労働制です。
例えば、営業職で外勤が多い場合は事業場外みなし労働時間制が導入され、専門職やクリエイティブ職では裁量労働制が導入されます。
つまり、みなし残業は「労働時間の扱いを一律にみなす制度」、裁量労働制は「労働の進め方や時間配分を労働者に委ねる働き方」である点が最大の違いです。
この違いを理解しておくことで、雇用契約の条件を誤解せず、納得した働き方を選ぶことができるでしょう。
まとめ
裁量労働制は労働時間の管理を労働者の裁量に委ね、成果で評価される働き方を可能にする制度です。
一方、みなし残業は労働時間に関わらず一定の残業代を給与に含める仕組みです。
みなし残業の中に裁量労働制が含まれる場合もあるため、両者は密接に関わっていますが、本質的には異なる制度です。
これらの違いを正しく理解することで、自分に合った働き方や求人条件を見極める手助けとなるでしょう。
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