懸念と危惧の違い

「懸念」と「危惧」は、どちらも未来に起こり得る事柄に対する不安や心配を表す言葉です。

しかし、この二つの言葉には微妙な違いがあります。

この記事では、「懸念」と「危惧」の意味や使い方の違いについて詳しく説明し、その英語表現についても触れます。

これにより、日常生活やビジネスの場面でこれらの言葉を適切に使い分ける手助けとなるでしょう。

 

懸念とは

「懸念(けねん)」という言葉は、「ある物事が気にかかって不安に思うこと」を意味しています。

「懸念」には「執着すること・執念を抱くこと」「一つの物事に集中する仏教用語」といった意味合いもありますが、一般的には「具体的ではない将来の事柄に対する不安・心配」を意味する言葉です。

「懸念」の使い方

「懸念」という言葉は、「まだ具体的ではないこれから先の物事について、気がかりに感じていたり不安に思っていたりする場合」に使うという使い方になります。

例えば、「スピード違反が事故につながることを懸念しています」「このプランには懸念事項がいくつかあります」といった文章で使えます。

「懸念」を使った例文

・『3年以上使用しているスマホが、経年劣化によって使えなくなることを懸念しています』

・『私が懸念しているのは、子供が運動部の部活で怪我をすることなのです』

・『この目的を達成するまでに想定される懸念事項が3つはあります』

・『懸念材料がなくなってからでないと行動できません』

・『国際社会で懸念されていた紛争事態が勃発しました』

「懸念」の類語

「懸念」の類語には、「気がかり・不安・心配・憂慮(ゆうりょ)・杞憂(きゆう)」などがあります。

「懸念」の言葉は、「ある物事が気がかりで不安・心配に思うこと」を意味しています。

「憂慮」とは「ある物事に対して漠然とした不安(憂い・気がかり)があるさま」「杞憂」とは「取り越し苦労」の意味を持っています。

「懸念」の対義語

「懸念」の対義語は、「安心・安堵(あんど)・確信・放念(ほうねん)」になります。

「懸念」とは、「気がかりで安心できない気持ち・不安な気持ちが忘れられないさま」を意味しています。

「安堵」とは「不安なことがなくなり安心するさま」「確信」とは「物事を不安に思うことなく信じること」「放念」「気にしないこと・忘れているさま」といった「懸念」とは反対の意味を持っています。

危惧とは

「危惧(きぐ)」という言葉は、「物事が上手くいかないのではないかと危ぶむこと」「これから先、良くない出来事が起こるのではないかと心配して恐れること」を意味しています。

「危惧」というのは、「将来の物事に対する、ある程度具体的な危機感・不安・心配・恐れ」を意味している表現なのです。

「危惧」の使い方

「危惧」の使い方は、「これから先、物事が上手くいかないのではないか(良くないことが起こるのではないか)というある程度具体的な危機感・恐れ・不安がある場合」に使うという使い方になります。

例えば、「母の病状が悪化するのではないかと危惧しています」「余震の継続が危惧されていました」といった文章で使うことができます。

「危惧」を使った例文

・『反政府勢力によるテロの発生が危惧されていました』

・『私が危惧しているのは、対策の遅れによる地震被害の拡大なのです』

・『危惧していた最悪の事態を回避することができました』

・『爆弾低気圧による天気の崩れで、登山客に遭難者が出るのではないかと危惧しています』

・『コロナ禍によって失業者・生活困窮者・自殺者の増加が危惧されています』

「危惧」の類語

「危惧」の類語には、「恐れる・危ぶむ・憂慮・憂える」などがあります。

「危惧」という言葉は、「物事が上手くいかないのではないかと危ぶんだり恐れたりすること」を意味しています。

「憂慮」とは「非常に心配すること・心配して思案するさま」「憂える」「心配すること・不安に思うこと」を意味している言葉です。

そのことから、「危惧」と類似した意味を持つ類語として、「恐れる・危ぶむ・憂慮・憂える」などが挙げられます。

「危惧」の対義語

「危惧」の対義語は、「安心・安堵(あんど)・確信」になります。

「将来において何か良くないことが起こるのではないかと危ぶむこと」を意味する「危惧」と反対の意味を持つ言葉として、「不安・恐れのない落ち着いた穏やかな心理状態」を意味する「安心」「安堵」が挙げられます。

「確信」には、「不安・疑いがなくて自信を持って信じている」といった意味合いがあります。

 

「懸念」と「危惧」の違い

「懸念」「危惧」はどちらも「まだ起こっていない物事に対する不安・心配」を意味していますが、「懸念」の言葉は「何か気がかりなことがあって漠然と不安に思うこと」を意味しています。

「懸念」に対して「危惧」のほうは、「懸念よりも具体的で危機感の強い不安(心配)の心理状態」「物事が上手くいかないのではないかと危ぶむ気持ち」を意味している違いがあります。

「危惧」の言葉には、「懸念」にはない「不安・危険だと感じて避けたいと思っている内容が具体的である(不安・危機感の原因がある程度明確である)」といったニュアンスが含まれているのです。

 

「懸念」と「危惧」の使い方の違い

「懸念」「危惧」の使い方の違いは、「懸念」「まだ具体的ではないけれど、心の中に漠然とした不安・心配の気持ちがあるさま」を意味して使いますが、「危惧」のほうは「危機的な状況(物事が上手くいかない状況)が起こるという具体的な予感がある場合」に使うという違いがあります。

例えば、「台風上陸を危惧する」のほうが「台風上陸を懸念する」よりも、「台風が実際にやってくる具体的な可能性が高い」というニュアンスがある違いを指摘できます。

 

「懸念」と「危惧」の英語表記の違い

「懸念」を英語で表記すると、以下のようになります。

“concern”(心配・関心事・気がかりなことから懸念を意味しています。)

“worry about~”(~を心配する・~を懸念する) 「懸念」に対して「危惧」を英語で表記すると、以下のようになります。

“apprehensions”(これからの出来事に対する不安・恐れ・危惧を意味しています。)

“fears”(恐れ・不安・恐怖から懸念だけではなく危惧の意味でも使えます。)

上記のように、「懸念」の英語表記は“concern”などで、「危惧」の英語表記は“fears”などである違いを指摘できますが、英語では「懸念」「危惧」の厳密な区別がなく言い換えは可能です。

 

まとめ

「懸念」と「危惧」は、どちらも不安や心配を表す言葉ですが、その使い方やニュアンスには違いがあります。

「懸念」は漠然とした不安を指し、「危惧」は具体的な危機感を伴う不安を意味します。

また、英語表記においてもそれぞれ異なる単語が用いられます。

この記事を通じて、「懸念」と「危惧」の違いを理解し、適切な場面で使い分けることができるようになることを期待しています。

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