席巻と圧巻の違い

「席巻」と「圧巻」は、日本語でよく似た言葉に見えますが、実際には異なる意味を持っています。

この二つの言葉の違いを理解することは重要です。それでは、具体的にそれぞれの意味と使い方について見ていきましょう。

 

席巻とは

「席巻(せっけん)」という言葉は、「凄まじい勢いで勢力・人気などを拡大すること」を意味しています。

「席巻」の語源は中国前漢の歴史書『戦国策』にあり、元々は「席(むしろ)を巻くように片っ端から外国の領土を攻めとって拡大すること」を意味していました。

「席巻」の使い方

「席巻」という言葉は、「凄まじい勢い(速度)で勢力(人気)を拡大する場合・ある時期や範囲で急速に評判になる場合」に使うという使い方になります。

例えば、「SMAPや嵐の全盛期にはジャニーズが芸能界を席巻しました」といった文章で使えます。

「席巻」を使った例文

・『GoogleやAmazon、Apple、Facebookといったアメリカの超巨大IT企業が時代を席巻しています』

・『経済的にも軍事的にも拡大傾向を見せている中国が、世界を席巻しつつあります』

・『新しいゲームのコンセプトを打ち出した任天堂スイッチがゲーム市場を席巻しました』

・『オリジナル番組を多く制作しているNetflixが、動画のサブスクリプション業界を席巻しました』

・『1940年代の歴史には、ファシズムの嵐がヨーロッパやアジアを席巻する危機の時代がありました』

「席巻」の類語

「席巻」の類語には、「持て囃される・脚光を浴びる・耳目を集める・時代の寵児になる・旋風を巻き起こす」などがあります。

「席巻」の言葉は、「ある時期にもてはやされて脚光を浴びること」「急速に話題になって耳目を集めること」「凄い勢いで人気を集めて時代の寵児になること」「ある業界・市場の範囲で旋風を巻き起こすこと」を意味しているのです。

「席巻」の対義語

「席巻」には国語辞典などに掲載される対義語はありませんが、反対の意味を持つ言葉として「勢いの失速・勢力の縮小・評判が落ちる・人気の凋落」などを考えることができます。

「席巻」の表現は「物凄い勢いで勢力を拡大して評判(人気)を高めること」を意味しているため、それとは反対の言葉として「勢いの失速・勢力の縮小・評判が落ちる・人気の凋落」を挙げられます。

圧巻とは

「圧巻」という言葉は、「物事・作品・物語の全体の中でもっとも優れている部分あるいは一番素晴らしい部分」を意味しています。

「圧巻」の語源は、古代中国における科挙(エリートの官吏採用試験)の『巻(答案)』の中で、最も優れた内容が書かれた答案を全ての答案の一番上に載せて示したことに由来しています。

「圧巻」の使い方

「圧巻」の使い方は、「物事・作品(本や劇)の全体の中でもっとも優れている部分を指示する場合」に使うという使い方になります。

例えば、「今回の全米オープンでは、お互いに一歩も引かず、相手のコートに何度も打ち込み合うラリーが圧巻でした」などの文章で使うことができます。

「圧巻」を使った例文

●映画で、恋人を冷たく裏切ったと思われた男性の秘密や理由が明かされる場面は、この映画の中でもっとも印象的でした。

●全豪オープンでは、精神的に強くなった大坂なおみが素晴らしいパフォーマンスを見せました。

●この演劇の舞台では、終盤の特に見逃せない素晴らしいシーンがありますので、ご注意ください。

●屋久島の観光では、時間をかけて歩かないと見られない縄文杉が特に見事です。

●投資界で成功した人物が、次第に強欲になって破滅する場面は映画『ウォールストリート』の中で特に印象深いです。

 

「圧巻」の類語

「圧巻」の類語には、「クライマックス・佳境・見せ場・山場・ハイライト・呼び物・見せ所」などがあります。

「圧巻」という言葉は、「作品・物語のクライマックス(佳境)」「イベント・作品の見せ場(山場)」を意味しています。

また「圧巻」には、「イベントなどでもっとも注目を集める呼び物・ハイライト・見せ所」といった意味合いもあるのです。

そのことから、「圧巻」と類似した意味を持つ類語として、「クライマックス・佳境・見せ場・山場」などが挙げられます。

「圧巻」の対義語

「圧巻」の対義語には、「互角・伯仲(はくちゅう)・駄作・つまらない部分・劣った部分」などがあります。

「圧巻」の言葉は「全体の中で特に優れている部分・他と比べて素晴らしい部分」を意味しているので、それと反対の意味を持つ言葉として、「他との間に優劣がなくて同程度の力があること」を示す「互角・伯仲」を挙げられます。

また「全体の中でもっとも素晴らしい部分」を示す「圧巻」の対義語として、「駄作(つまらない作品)・つまらない部分・劣った部分」といった言葉も想定することができます。

 

「席巻」と「圧巻」の違い

「席巻(せっけん)」と「圧巻(あっかん)」の違いは、「席巻」が「強烈な勢いで勢力を拡大していく様子」を意味するのに対し、「圧巻」は「物事や作品の全体の中で最も優れた部分」を指すという点です。

「席巻」は特定の時期や範囲で、力強く勢力や人気を広げることを示し、「圧巻」は全体の中で最も良い部分や見どころを示す違いがあります。

 

「席巻」と「圧巻」の使い方の違い

「席巻」「圧巻」の使い方の違いは、「席巻」の表現は「ある時期・業界・範囲において、凄い勢いで勢力(人気)を拡大した場合」に使いますが、「圧巻」のほうは「物事・作品の全体の中でもっとも優れている部分・箇所」を指示して使います。

例えば、「新型コロナウイルスが世界を席巻しました」「鬼滅の刃は竈門炭治郎が必殺技で敵を倒すシーンが圧巻です」のような文章で使います。

 

「席巻」と「圧巻」の英語表記の違い

「席巻」を英語で表現すると、

“be taking over”や”be conquering”(征服する意味から席巻するという意味です)。

“be sensational”(人々が騒いで評判になっている状態を示します)。

「席巻」に対して「圧巻」を英語で表現すると、

“the best part”(最も優れた部分やハイライトを指します)。

“the highlight”(作品やスポーツで最も素晴らしい部分を示します)。

“masterpiece”(傑作や素晴らしい作品を指します)。

これにより、「席巻」の英語表現は通常「be sensational」などであり、「圧巻」の英語表現は「the best part」などとなることが指摘されます。

まとめ

「席巻」と「圧巻」は、それぞれに独自の意味がありますが、両者ともに物事や作品に対して重要な評価を与える言葉です。

一方、「席巻」は時期や範囲での勢いや人気の拡大を指し、「圧巻」は全体の中で最も優れた部分や見どころを表します。

これらの違いを把握することで、正確な表現が可能となります。

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